現在の環境を「あえて手放さない」という選択肢
「新しいことに挑戦するなら、まずは今の環境をリセットしなければならない」
キャリアの方向性を考えるとき、そんなふうに思い詰めてしまうことはないでしょうか。SNSなどでは、会社を辞めて思い切った行動に出るストーリーが注目を集めやすく、今の場所にとどまっている自分に焦りを感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、働き方の選択肢が多様化している現在において、今の会社に在籍したまま将来の準備を進めることは、決して消極的な選択ではなく、むしろ非常に有効な「戦略」になり得ると言えそうです。
まずは、会社員という立場を維持しながらキャリアを模索することのポジティブな側面と、あらかじめ知っておきたい懸念点を整理してみましょう。
会社に残りながら準備を進めるメリット
最大の強みは、何と言っても「経済的・精神的な安全網(セーフティネット)」が確保されている点にあります。毎月の安定した給与があることで、「生活のために、とにかく目先の利益を優先しなければ」という切迫感を持たずに済みます。結果として、本当に自分がやりたいことや、長期的に価値のあるスキル習得に、落ち着いて時間を使える傾向にあります。
会社に残りながら準備を進める懸念点
一方で、ネガティブな側面(懸念点)としては、日々の業務に時間と体力を奪われやすく、新しい行動を起こすためのエネルギーが残りにくいことが挙げられます。「今のままでもなんとか生活はできる」という状況が、かえって変化へのモチベーションを下げてしまい、結局何も行動を起こせずに何年も過ぎてしまう、というリスクも存在します。
会社員という「ベースキャンプ」を活用したキャリア探索
では、日々の業務に埋没せず、いまの環境を「ベースキャンプ(拠点)」として活用するにはどうすれば良いのでしょうか。そのための現実的な手段として、副業という選択肢が機能するかもしれません。
リスクを抑えて「適性」をテストする
副業は、単に収入を増やすための手段としてだけでなく、「自分にはどんな働き方が向いているのか」を測るテストとして活用できます。 会社という安全網がある状態なら、未経験の分野の仕事を受注してみたり、これまでとは全く違う役割に挑戦してみたりと、大胆なテストがしやすくなります。もし「この仕事は少し自分には合わないな」と感じたとしても、本業の収入があるため、大きなダメージを受けることなく次のテストへと移行できます。
自分の「市場価値」を客観的に知る
社外のクライアントと直接やり取りをすることで、「自分のスキルが、会社の看板なしでどれくらい通用するのか」を客観的に知る機会にもなります。 会社の中では当たり前だと思っていた事務処理の正確さや、コミュニケーションの丁寧さが、外部の市場では高く評価されるという気づきを得られるケースも少なくありません。
経験をもとに、将来の選択肢をフラットに比較する
今の環境を維持しながら様々なテストを繰り返していくと、やがて「自分が心地よいと感じる働き方」の輪郭が見えてくるはずです。その気づきをもとに、将来の選択肢を改めて見渡してみましょう。
自分の裁量で進めるのが心地よいなら「フリーランス」
個人で仕事を受け、自分のペースで進めることに何よりの充実感とやりがいを感じたなら、将来的にフリーランスとして独立する道が合っているかもしれません。副業を通じてある程度の顧客や収入基盤を作ってから移行できれば、独立直後の経済的な不安を最小限に抑えられそうです。
組織の中で、新しい役割に挑戦したいなら「転職」
「社外の仕事も面白かったけれど、やっぱりチームで協力して大きな目標に向かうほうが好きだ」と感じることもあるでしょう。その場合は、副業で得た新しいスキルや視点を武器にして、より自分の希望に合う環境へ「転職」するという選択が考えられます。複数の世界を知った上での転職活動は、以前よりもクリアな基準を持って会社選びができるようになっているはずです。
ゼロから仕組みを作り出すことにワクワクするなら「起業」
自分のアイデアを形にし、より大きな仕組みとして世の中に提供していきたいという思いが強くなったら、それは起業という選択肢が視野に入ってきたサインかもしれません。まずは小さな事業としてスタートさせ、軌道に乗ってから本格的に法人化するなど、ここでも段階を踏んだアプローチが可能です。
新しい選択肢を育てるための時間とエネルギーの管理
会社にいながら新しい準備を進めるためには、時間と体力のマネジメントが欠かせません。頑張りすぎて途中で息切れしてしまっては本末転倒です。
「やらないこと」を決めて余白を作る
まずは、今の生活の中から「少し減らせる時間」を見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。たとえば、何となくスマートフォンを見ている時間や、そこまで重要ではない飲み会の時間などです。新しいことを始めるためには、まずそのための「余白」を意識的に作ることが大切になりそうです。
長期戦を前提に、自分を休ませる
キャリアの選択肢を増やす作業は、数日で終わるものではありません。長期間にわたって安定して行動を続けるためには、「疲れたらしっかり休む」というルールをあらかじめ決めておくことが重要です。休日はしっかりと仕事から離れ、自分の好きなことをして心身をリセットする。そのメリハリが、結果的に行動を長続きさせてくれます。
まとめ:選択肢の多さは、心のゆとりを生み出す
「いつかは今の環境を変えたい」と考えたとき、すぐに会社を辞める必要はありません。
現在の環境をひとつの拠点として活用し、そこから少しずつ別の世界をのぞいてみる。そうやって「いざとなれば別の道もある」という選択肢を複数持っておくことは、日々の生活に大きな安心感とゆとりをもたらしてくれるはずです。
今すぐひとつの結論を出す必要はありません。焦らず、まずは今の生活の中でできる小さな行動から、ご自身のペースで可能性を広げていくのが良いのではないでしょうか。